2012年5月: 山形県 山形グランドホテル
(2012年5月10日 発行)
桜前線もいよいよ東北まで上ってきました。季節感が薄くなったといわれる昨今です
が、桜の季節は、この国の南北の長さや四季の移ろいを感じずにはいられません。震災
から1年が過ぎ、東北地方の観光は依然厳しいといわれていますが、むしろ各地の思い
は前向きです。今回は、山形グランドホテルを訪ねました。

「スタッフ全員の中級合格を目指しています。」
同館で40年勤務する浦山敏夫さんは、現在、常務取締役として、ホテル運営に携わっています。「初年度は、フロントスタッフを中心に10名ほど受験させました。正直、最初、内容的には旅館向けかな・・・とも思いましたが、その後の合格者の成長を見ながら、おもてなしには旅館も、ホテルもないとも思い、その後はサービス部門にも拡大しています。目指すのは、全員中級合格です。」と、温和な口調で話されました。「ホテルとしては、スタッフのおもてなしの気持ちを同じ方向に向けて、同じレベルの均一なサービスができることが、まず重要です。」とおもてなし検定の役割を評価いただきました。一方では、「まだまだ認知向上の努力が足りないのでは?」と、よりたくさんの方が受験されることを期待しておられました。

「どんどんクリアになっていくそんな感じがありました。」
フロント課主任を務める三浦泰暢(みうらやすまさ)さんは9年目。中級合格者です。「受験にあたり、旅館とホテルの違い、特に旅館のしきたりやルールのようなものには、ずいぶんと苦労しました。同僚と問題を出し合い、シミュレーションしながら勉強しました。」と、受験勉強のご苦労を伺いました。入社当初から三浦さんは、サービスのありかたについて、ご自身で相応の意識をもって取り組んできたそうですが、初級、中級と合格するにつれて、自分の中の曖昧なものが明確になり、あたかも霧が晴れていくようだったといいます。「私たちの仕事は、はじめは自分の中で手探りで学び、そして、先輩から教えられます。さらには、お客さまからも教えられます。そして、この検定で教えられながら、どんどんと、おもてなしに厚みが出てくるような感じがしています。」とおもてなし検定の効果を話されました。
冒頭の浦山さんが、ご自身のこの40年を振り返りながら、「時代が変わって、お客さまの求めるサービスの内容が細やかになりました。より専門的な知識やサービスが必要になりましたね。」と、お話されたのが印象的でした。あたかも“おもてなし” とは、サービスの普遍的なものを表現しているかのように錯覚してしまいがちですが、実は、お客さまの時代変化に合わせて、観光業界全体に必要なアップデート作業なのかも知れません。今に安住することが許されず、むしろ震災被害で前に進む選択肢しか持たない東北の施設だからこそ、自然に見えてくる世界観なのかも知れません。
2012年5月: 沖縄県 ザ・ブセナテラス
(2012年5月10日 発行)
日本におけるホテル文化は、明治の夜明けと共に始まります。旅籠と呼ばれた旅館の歴史と比較すると相当に新しいものです。時代の高度成長と共に急速に広がり、日本人に欠かせない旅文化の一翼を担うようになりました。今回は、おもてなしの心を探りに、沖縄へ、ザ・ブセナテラスを訪ねました。

「接遇の際、テキストの内容が脳裏をよぎります。」
そう話すのは山下江利子さん。ドアマン等を経験しながら、3年前からコンシェルジュを担当している10年目の中堅スタッフです。「会社から検定を紹介され、有志で受験しました。テキストを日々読み続けました。合格してからは、仕事に広がりが出てきた感じがしています。これまでの自分のサービスのあり方に自信がつきました。」
テキストには、旅館に関する表記も多く、他のスタッフの中には戸惑いを隠さない方もいたそうですが、山下さんは、旅館の業務の中に自らの仕事の共通点を見つけて、検定に挑戦、自分のものにされたようです。「旅館も、ホテルもお客さまをお迎えする心は共通です。おもてなし検定は、今の自分を振り返ることができて、いいですね。ホテルに関する内容も、もっと知りたいです。」とお話されました。

「案外、自分の変化に、自分は気づかないものです。」
宮里いずみさんは、コンシェルジュ・アシスタント・チームリーダー。前述の山下さんの上司にあたります。3年前に、おもてなし検定を知り、当時、テキストを手に入れて、熱心に読まれたそうです。「受験後、彼女が、自信に溢れ、モチベーションが高まったのを近くにいて感じています。お客さまへの対応が、以前に増して丁寧になったようです。本人の変化には、本人より周囲の方が敏感です。」
一緒に仕事をしながら、暖かく見守る上司の目線には、その変化が頼もしく映っていることでしょう。「サービス業の基本は『おもてなし』、まさにお客さま対応の中心です。それと共に、これからの人材には基礎的な知識も必要になります。『おもてなしの心』は、その中でも特に大切なものですね。おもてなし検定では、知識ももちろん高まりますが、モチベーションが高まる点に意義の深さを感じています。」サービス業の成熟化と共にサービスする側に求められるものも変化してきているようです。「お客さまの喜びは、私たちの喜びです。日常のなかでテキストを通じて学ぶという習慣も少ないので、今後も拡大して欲しいものです。」とエールをいただきました。
旅の仕方や志向は人それぞれ。そのときの気分に合わせて、一夜の宿の選択も変化するものです。お客さまは、そうやって旅館とホテルという2つの異なる旅の文化を豊かに楽しんでいらっしゃいます。今一度「おもてなし」という言葉を、お客さま目線で眺めてみれば、それは大切な時間と穏やかな空間を演出してくれる柔らかな空気のようなものかも知れません。旅館に限らず、観光サービスに携わる多くの人々が、同じ思いに立った時、この国の旅は、もっと素敵なものになることでしょう。